Gnosisとは、予測市場アプリケーションのためのプラートフォームです。Gnosisの上にさまざまな予測市場アプリケーションを開発することが可能となります。

「予測市場」と聞くと単に「ギャンブル」のようなイメージが先行しがちですが、Gnosisではイーサリアムブロックチェーンをベースとして、バイアスのかかっていない信頼性の高い予測データを効率的に集められる予測市場を目指しています。

そこで、当記事では予測市場の重要性とGnosisの仕組みについて解説していきます。

 

Gnosisと予測市場の重要性

Gnosisは予測市場のためのプラットフォームとして機能します。まずは「予測市場」とは何なのか見ていきましょう。

予測市場とは、イメージとしてはギャンブルとアンケートを組み合わせたようなものです。例えば、「今年中にETHは10万円に達するか」という題に対して「YES」か「NO」でユーザーが資金を賭けます。もしくは、「今年のETHの最高値はいくらになるか」という題に対して、ユーザーが具体的な数値で賭けを行います。

ユーザー自身が十分に思考して選んだ選択肢に対して、予想が当たれば儲けが得られますし、はずれれば損をします。このようなギャンブル的側面を用いてスポート賭けや株価予想などのDappを作ることが可能です。

 

また、他の側面として予測市場は集団の知恵を集約化する方法であるとも表現できます。

通常のアンケートとは異なりお金が絡んでくるのでユーザーは適当には回答しません。しっかりと自分自身で思考し、強く信じていることを回答するのでより精度の良いデータ(知恵)を集めることがが可能になります。さらに、大規模なユーザーが自由に参加できるので、世界中に分散化されたバイアスのないデータを集めることができます。

つまり、ブロックチェーンを活用することで大規模に分散化された集合知によって意思決定を行うことができるのです。

 

そして、ブロックチェーンを基盤とした予測市場は不正がなく、低コストに行うことができます。本来、大規模に市場調査を行おうとすると多くの時間がかかり、金銭的コストも多くかかってくるはずです。

Gnosisはイーサリアムブロックチェーン、スマートコントラクト、オラクルなどを活用して理想的な予測市場の構築を目指していることになります。

 

まとめると、イーサリアムブロックチェーンを基盤としたGnosisを使った予測市場は以下のことを実現します。

  • 予測市場は効率的に信頼性の高いデータを集めることができる
  • 予測市場は大規模に分散化され、バイアスのかかっていないデータを集めることができる
  • 予測市場はユーザーが良い予測をすることに経済的インセンティブを与える
  • 予測市場は新しいデータを素早く集めることができる
  • 予測市場は不正のない市場調査を可能にする

 

予測市場によって市場参加者が関心を持っている未来の出来事の情報を効率的に集めることができるのです。実際、GnosisチームはTwitterのアンケート機能でGnosisプロトコルを用いた予測市場が使えるように目指しているようです。

他にも、保険、金融市場、データ販売、IoTデバイス間でのデータ予測・最適化などに応用していくことが考えられます。

それでは、このような予測市場を実現するためにGnosisはどのような仕組みで動いているのか見ていきましょう。

 

Gnosisの仕組み

Gnosisはイメージ的には、以下のように4層から成るプラットフォーム構造となっています。下図のようにイーサリアムブロックチェーンを最下層にして、その上に3層のGnosisレイヤーが乗っかるイメージです。

 

Gnosis

(source: GNOSIS)

最下層はイーサリアムブロックチェーンとなっており、その上にプロトコルの中核となる「Gnosis Core」、そのコア層に機能を追加するための「Gnosis Services」、そしてそれらを土台として実際にユーザーが使うアプリケーションが機能します。

 

また、予測市場ではオラクルの働きがとても重要になります。

ブロックチェーンネットワークを基盤とした予測市場を実現するためには、ネットワーク外部の情報を仕入れて来なければいけません。来週の天気を予測するためには、ブロックチェーンネットワークにはない天気の情報が必要ですし、株価を予測するときも外部から情報を仕入れてくる必要があります。

この情報の仕入れはオラクルによって行われます。オラクルが正確な外部情報を持ってきてくれるのです。

 

ただ、オラクルも開発途上のシステムです。現在、Gnosisのオラクルには、オンチェーンオラクル、集権型オラクル、分散型オラクルの3つのタイプのオラクルシステムが定義されていますが、今後はサードパーティのオラクルシステムをGnosisに導入していく方針です。

参考:ブロックチェーンとインターネットの間でデータの橋渡しをするオラクルとは

 

それでは、Gnosisプロトコルの中核を成すコア層について詳しく見ていきましょう。

 

Gnosis Core

Gnosis Coreはプロトコルの中核を成す層で、予測市場においてベースとなるさまざまなスマートコントラクトが実行されます。これらのコントラクトは、トークンの発行や決済、価格の決定、オラクルとのやり取りなどを定義しています。

コア層には25個以上のさまざまなスマートコントラクトが定義されていますが、その中でも重要なイベント・コントラクトマーケット・コントラクトを紹介していきます。

イベントコントラクトとマーケットコントラクトは下図のように働きます。

Gnosis

イベントコントラクトはオラクルコントラクトからの外部情報を参照し、市場予測の結果を判断します。また、賭け金となるETHなどのトークンをその予測市場で使われる選択肢のトークンに変換します。

マーケットコントラクトでは、市場の需要と供給に基いてトークンの価格を自動的にリアルタイムで決定していきます。

 

イベントコントラクト

イベントコントラクトが行うことは上図のように、オラクルコントラクトを参照することでユーザーが賭けたトークンに対して選択結果のトークン(Outcomeトークン)の価値を決定することです。例えば、明日の天気は晴れか雨かという予測に対して、あるユーザーが10ETHを賭けたとします。

すると、「晴れ」に賭けたか「雨」に賭けたかに関わらず、10晴れトークンと10雨トークンを得ることができます。(この時点で晴れトークンと雨トークンの価値は決まっていません)

もしユーザーが「晴れ」に10ETHを賭けたとすると、10雨トークンを売ることになります。この雨トークンの値段は市場予測に基いて決められ、市場が70%の確率で「明日は雨になる」と判断しているとすると、10雨トークンは7ETHの価値を持つことになるのです。

 

つまり、この時点でユーザーは10ETHを賭けて7ETHの価値がある10雨トークンを売ったので、3ETH(10ETH – 7ETH)を持っていることになり、10晴れトークンは3ETHの価値を持つことになります。要するに、ユーザーは3ETHで10晴れトークンを買ったことになります。

もしオラクルの結果により「天気は晴れ」であることが確定した場合は、晴れトークンのみが価値を持つことになり、雨トークンは無価値になることになります。

 

なので、1晴れトークン=1ETHの価値を持つことになり、ユーザーは元の10ETHに加えて7ETH(10ETH – 3ETH)の利益を得ることができるのです。一方で、雨を選んだユーザーは3ETH(10ETH – 7ETH)の損失となります。

少しややこしいですが、イベントコントラクトが主に行うことは、オラクルコントラクトから予測市場の結果を参照することと、ETHなどの賭けトークンを予測市場における出力トークンに交換していくことです。

 

また、イベントコントラクトはこのような2択の市場予測だけでなく、さらに多くの選択肢を持つ予測市場に応用することもできますし、「年末のETHの価格予想が10万円」という予想に対して「もっと高い」「もっと低い」という選択を行うこともできます。

「もっと高い」と市場が判断すれば、予測の題が「年末のETHの価格予想が15万円」というように上がり、逆に「もっと低い」と感じる人が多ければ「年末のETHは5万円」というように変化します。こうして、一定期間で「年末のETHの価格」に対する市場予測を効率的に得ることが可能となるのです。

 

マーケットコントラクト

マーケットコントラクトでは、発生したoutcomeトークン(晴れトークンと雨トークン)を市場で売買することを可能にしてくれます。

晴れトークンを売買するときはマーケットメーカーというボットが、現在市場はどのように予測しているのか、という状態に基いて晴れトークンの価格を自動的に決めてくれるのです。

GnosisではLMSRという仕組みのマーケットメーカーがトークンの需要と供給に基いて価格を変動させていることになります。

 

また、トークンを市場でやり取りするためには最初にある程度の流動性が必要です。そのため、市場作成者はトークンの流動性を得るために資金を市場に与えなければいけません。

これもマーケットコントラクトで行われており、市場作成者は初期流動性を与えるための資金をトレードのスプレッドから手数料という形で得ることが可能になるのです。

以上のように、Gnosisプロトコルのコア層ではさまざまなスマートコントラクトが互いに連携して予測市場を機能させていることが分かります。ここで紹介したコントラクトもほんの一部分であり、さまざまな

 

また、Gnosisのチームが描いているイメージとしては下図のように、GNOトークンを中心として安全なウォレットとともに、予測市場と分散型取引(DEX)が互いに連携するような構想を描いています。

Gnosis

 

コア層の解説でも触れたように予測市場には多くのトークンが関与することになります。手数料を払うためのWIZトークンやプロトコルで中心となるGNOトークン、そして資金を入れるためのETHトークンなどが登場します。そのために効率的に稼働するDEXの開発が必要になるのです。

Gnosisは市場予測プロトコルの開発と並行して、DEXとウォレットの開発も積極的に行なっていくと開発チームが述べています。

また、Gnosisが開発しているDEXはDutchXと呼ばれ、ダッチオークション形式のDEXになります。ダッチオークションなので開始から徐々に価格は下落していくことになります。

さらに、Gnosisではネットワーク効果を高めていくためにWIZトークンとGNOトークンという2種類のトークンが用意されています。このようなトークンモデルについては以下の記事で詳しく解説しています。

参考:Gnosisのトークンモデルに注目すべき。GNOトークンとWIZトークンの役割とは